1985年（昭和61年）にお父様が建てられた郊外の一戸建て住宅を引き継いで居住することを決めたのは、2018年でした。
なにぶんにも突然のことでしたので、入居に際しては、内装を少し手直しした程度でした。

（1）リフォーム計画
よって、今回はフル・リフォームを、という方針で、以下のような検討を承りました。
1. 夏は暑く、冬寒い、現状の温熱環境を改善して、快適な住まいとする。
2. 入居時には最低限のリフォームしかしなかったので、今回は自分たちの好みに変えたい。設備については、最新のものへ取り替える。
3. 外部の塗装は父の時代に行っているので、今回は防水の更新を行いたい。合わせて、外部の排水についても整備してほしい。

（2）打ち合わせ
旦那様、奥様ともにお忙しく、家族が揃って打ち合わせをする時間が全くと言っていいほど取れません。打ち合わせはもっぱらメールで、ということでしたので、私たちサイドでの提案作りに力を注ぎました。まず、断熱性能の向上については、どのレベルまで行うか？ということについて、検討が進められ、次世代省エネレベル（省エネ等級4）がとりあえずの目安となりました。「予算」という制約の中で、窓、天井、床などのうち、「どの部屋のどの部分を強化すると居住性向上に有効か？」ということを、弊社のシミュレーションプログラム（phs/1）を使って検討が行われ、各部位の仕様を決めていきました。冬場の熱損失、夏の日射取得と冬の日射取得、窓の種類や断熱材の厚みや材料を変えて、最適な値を求めます。

特に1階床の断熱については、同じ厚みで倍の断熱性能が得られる、フェノール樹脂断熱材を採用。すでにある床根太に隙間なく施工することで、高い断熱性能と床下からの湿気を防ぐことができています。現状の建物の収まりを考慮して材料を選定しています。設備については、機能性に優れ、メンテナンスがしやすいものを提案しています。多忙な日々を送っておられる中で、できるだけ手間をかけずに快適に暮らせることに配慮しました。キッチンについては、当初は対面型キッチンが希望でしたが、間取りや使い勝手を考えて、機能的 なI型キッチンとなりました。洗面化粧台、バスユニット、2階洗面とトイレなど、設備品の選定に加えて、各部屋での断熱や換気について、仕様が検討されました。

窓については、主な居室については、以前からのアルミサッシと単板ガラスからLowEガラスの樹脂・アルミ複合サッシへと取り替えられました。冬の断熱性能アップだけでなく、夏場の直射日光による室内温度の上昇を抑えることが期待されます。

デザイン面では、とくにお客様のこだわりが感じられるのが和室です。これまでの生活での和室の落ち着きをそのままに、リビングやダイニングとのつながりと広縁のような庭へのつながりを大切にした、新しい試みです。琉球畳にすることで、これまでよりもモダンな、ふだん使いの和室となりました。これからの生活で、どのように使われていくのかが楽しみです。

（3）工事進行
工事が進んでいく中で、建物の内部で見えていなかった幾つかの問題がわかってきました。痛んでいた天井裏の断熱材を新しい断熱材（ロックウール）と入れ替えたり、1階床根太の痛んでいた部分を取り替えたり、変色しているスイッチプレートを入れ替えたり、換気レジスターを交換したり、と、周りが新しくなると、一緒に刷新したほうがいいものも見えてきます。床の断熱・気密性能を上げましたので、点検口や床下収納庫も気密タイプに変更しています。

（4）完成
このような工事をお盆前の約1ヶ月余りの期間で終えることができました。工事に携わっていただいた方々の協力の賜物です。連日35℃を超える猛暑日暑い日が続く中、お疲れ様でした。